マーキング

 夜、地下鉄に乗ろうと階段を降りたところ、不審な壮年男性を見かけた。
 下半身をもぞもぞとまさぐりながら、前かがみになってよろよろと壁に向かって歩いていく。
 悪い予感がした。そして予感は当たった。
 彼は、壁に向かっておもむろに小便を放出し始めたのだ。
 シャワァァァァ
 コンクリートに流水が打ちつけられ、水溜りを形作っていくのが、音を聞いているだけでわかった。
 駅構内で立小便なんかすんなよ(;´Д`)
 しかも、後退して数十メートル歩けば便所があるというのに……
 酔っ払って判断能力が低下していたのか、はたまた便所の存在を知らなかったのか、ただ単に我慢できなかったのか。どうでもいいけど。