妙な出来事

 午後5時頃、訪問者があった。
 応じてみれば、そこには見るからに浮浪者然とした老人が一人。
「電話の消毒!! 電話の消毒殺菌!!」
 吐き捨てるようにわめきながら、きたないガーゼを見せてきた。
「何ですか?」「いらない?」「はい」「あそう」
 かかる手短なやりとりがあっただけで、老人は去っていった。
 一体なんだったんだ?
 空き巣の下見か? 訪問販売員の斥候か?
 面倒くさいことの前触れじゃなきゃいいがな……
 しばらく部屋を空けることになる時期が近いこともあって、妙な胸騒ぎを覚える。