空が闇に包まれた。無数の雨粒が大気を駆けおりる。
容赦なく打ちつける水滴の機銃掃射。
瞬く間に、脚が水に染まった。
そんな中で靴紐がほどけたりなどすると、脂肪の塊をむりやり口に詰めこまれているような感覚に襲われる。
敵の弾の届く場所で立ち止まれば向こうの思う壺だ。雨がしのげる場所に着くまで我慢すべし。
雨水が染みわたって重い足に鞭打って、水しぶきの舞う道をひた進む。
ほどけた靴紐は、見捨てられたことを呪うかのように、濡れたその身をくねらせて足首を狙う。
この上、たどりついた電車が満員で、窓に結露がかかっていたりなどすれば、申し分のない鬱シチュエイションの出来上がりだ。