23号

もうい

 空が闇に包まれた。無数の雨粒が大気を駆けおりる。
 容赦なく打ちつける水滴の機銃掃射。
 瞬く間に、脚が水に染まった。
 そんな中で靴紐がほどけたりなどすると、脂肪の塊をむりやり口に詰めこまれているような感覚に襲われる。
 敵の弾の届く場所で立ち止まれば向こうの思う壺だ。雨がしのげる場所に着くまで我慢すべし。
 雨水が染みわたって重い足に鞭打って、水しぶきの舞う道をひた進む。
 ほどけた靴紐は、見捨てられたことを呪うかのように、濡れたその身をくねらせて足首を狙う。
 この上、たどりついた電車が満員で、窓に結露がかかっていたりなどすれば、申し分のない鬱シチュエイションの出来上がりだ。